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症例報告

● 犬において最もよく見られる眼疾患である角膜潰瘍

一般診療施設を訪れる眼疾患罹患動物のうち眼表面疾患が全体の6割を占め、さらにその6割が角膜疾患であると言われ、今回は、その中で最も遭遇すると思われる角膜潰瘍についてご説明します。

病態

角膜は眼球の最も前にある透明な膜であり、
1)光を透過させること。
2)光を屈折するレンズの役割をすること。
3)眼球の形を保持すること。
という3つの役割を持っています。 角膜の構造は、最外層から角膜上皮、角膜実質、デスメ膜、角膜内皮の4層よりなり、角膜潰瘍は、何らかの原因により角膜上皮から深層に病変が及び、組織欠損を起こした状態です。このような状態が、深部にまで達すると角膜の瘢痕形成あるいは角膜穿孔による虹彩前癒着によって視覚が損なわれます。原因としては、外傷、異物、薬品、感染症、アレルギー反応、免疫反応などが考えられます。

診断

角膜潰瘍は角膜の侵されている深さにより表在性、深部実質、デスメ膜瘤というように分類されます。これにより治療法についても選択されます。
そこで、潰瘍の段階と重症度の確定のために以下の検査を実施します。
1)トランスイルミネーターによる検査(図1)
最も一般的な検査で、光を斜め方向から照射し、肉眼あるいは拡大鏡で観察します。
【図1】
トランスイルミネーター
2)スリット光による検査(図2)
細隙灯顕微鏡、ハンドスリットランプなどにより、細長い光を斜め方向から照射し、その断面像より角膜病変の位置、深さ、血管新生の位置などを確認します。
【図2】
細隙灯顕微鏡
3)角膜染色検査
i.フルオレセイン染色(図3)
上皮の欠損部が染色され、角膜障害部位を確認出来ます。
ii.ローズベンガル染色
ムチンに覆われていない結膜や角膜が染色されます。

【図3】
フルオレセイン染色
次に、潰瘍の原因追求のために以下の検査を実施します。
1) 眼表面の検査
眼表面全般を調べることが重要であり、上下眼瞼(睫毛、マイボーム腺を含む)、眼瞼結膜、眼球結膜、結膜円蓋、瞬膜と調べていきます。
2) 涙液の検査(図4)
シルマー法と呼ばれる涙液分泌機能検査で、総涙液量が測定されます。
3) 角膜掻爬(図5)
感染が疑われる角膜潰瘍では細菌培養や感受性試験、細胞診のために角膜掻爬を行います。 以上の検査より、角膜潰瘍の段階と重症度、角膜潰瘍の原因を診断し、最適な治療を選択します。
【図4】
涙液分泌機能検査
【図5】
角膜掻爬
 

治療

治療法については、角膜の侵されている深さとその原因、角膜の状態により内科的治療、外科的治療の選択が行われます。
内科的治療としては、以下の薬剤が使用されます。

1)抗菌剤点眼薬
表層での角膜の疾患では感染症が多く、抗菌剤を使用することが多いです。常在菌としては、Staphylococcus属やStreptococcus属のグラム陽性菌が優位であるため、グラム陽性菌に有効な抗菌剤を用います。さらに、重度な場合には感受性試験に基づき抗菌剤を利用します。
2)抗コラゲナーゼ薬
角膜潰瘍の進行の早い場合には、角膜実質の膠原線維の融解予防のために抗コラゲナーゼ薬を用います。また、血清中α2マクログロブリンも抗コラゲナーゼ作用を持ち、自己血清が利用されます。
3)毛様体筋麻痺薬


角膜潰瘍時、毛様体痙攣が起こり、それによる目の不快感を緩和するためにアトロピン点眼薬が利用されることもあります。
外科的治療としては、以下の方法があります。
1)瞬膜弁被覆術
2)結膜弁被覆術(図6)
3)角膜移植

最後に、角膜潰瘍は最もよく見られる眼疾患の一つであり、比較的早期に気づくことができ、的確な検査および診断により視覚喪失を免れることが出来ます。

 【図6】
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