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症例報告

● フラットコーデッド・レトリバーの悪性線維性組織球腫

悪性線維性組織球腫は、通常皮下組織に発生する、硬く侵襲性のある腫瘍であり、フラットコーデッド・レトリバーで多く発生することが報告されています。肩甲骨部や胸郭背側に好発し、局所的な再発が多く全身性の転移はまれであるとされています。局所浸潤が強く、部分的な摘出が難しいため、しばしば断脚手術が適応になります。化学療法や放射線療法に対する反応性の報告はなく、症状が進行した際には治療が困難な腫瘍です。


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症例

フラットコーデッド・レトリバー、4歳11ヶ月齢、避妊雌の患者です。8ヶ月前より左前肢の間欠的な部分負重性跛行が認められていましたが、症状が悪化してきたとのことで当院を受診されました。

各種検査

1) 身体検査 左側肩関節の腫脹よび疼痛が認められました。

2) 血液検査 C反応性蛋白(CRP)の上昇(7 mg/dl)が認められましたが、その他の異常値は認められませんでした。

3) X線検査 上腕骨の結節間溝および肩甲頚の周囲にX線不透過性の亢進(図1矢印)を認めました。(図1)

4) 関節穿刺検査 左側肩関節の関節液を採取したところ、粘稠度の低下と色調の変化が認められました(図2)。関節液の細胞診検査では細胞質内に空胞を持ち、多核で核仁明瞭な細胞が観察されたため、組織球系腫瘍の存在が疑われました(図3)

【図1】
【図2】
【図3】
細隙灯顕微鏡

5) 関節鏡検査 関節包の繊維化や二頭筋腱の軽度な炎症が認められ、関節全体に炎症が波及していることが示唆されました(動画1)
さらに、上腕骨上に黄色の腫瘤性病変が認められました(動画2)。画像上は明瞭な悪性所見が認められましたが、治療を検討する目的で、更なる組織学的検査を行いました。

6) 病理検査所見 関節鏡視下で病変部を摘出し、検査を行ったところ悪性組織球症を疑う所見が得られました。その後、断脚を実施し、悪性繊維性組織球腫との診断を得ました。

動画1
(Windows Mediaファイル形式:約2.7MB)
動画2
(Windows Mediaファイル形式:約1.3MB)

治療

病理診断より長期的な予後は不良と考えられました。しかし、肩関節の腫脹が悪化し、疼痛が強く認められるようになったため、QOLの改善を目的とした断脚術を実施しました。 化学療法等の治療はオーナー様の希望により、行いませんでした。

おわりに

フラットコーデッド・レトリバーは組織球系腫瘍の好発犬種として知られています。我々の施設では、半年間で4例のフラットコーデッド・レトリバーの関節内腫瘍(うち3例が組織球系腫瘍、全症例が4〜5歳齢)を経験しており、慢性の跛行を呈する際には腫瘍の可能性を吟味すべき犬種であると認識しています。

本症例は各種検査を組み合わせることで確定診断に至りましたが、中でも、関節鏡検査の感度の高さは特筆すべきものがありました。今後は関節鏡検査を積極的に行い、腫瘍や他の整形外科疾患の早期発見に繋げていきたいと考えています。

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